神事に日本酒が欠かせないことからもわかるように、
やまたのおろちの神話時代から、
日本人は酒造りを綿々と受け継いできました。
酒の起源については諸説ありますが、一つは神様へに供えたご飯を濡らしてしまって、カビを生やしたというもの。いつしか佳い香りがしてきて、おそるおそる口に入れてみると、なんとおいしい酒が出来ていたのだとか。自然界に住む麹カビの糖化酵素と、野生酵母のアルコール発酵のおかげで、自然に酒ができあがったのです。
見えない酵母の働きで、お米からお酒ができるのを見た昔の人々は、神様がお造りになっているのだと思いました。無理もありません、目に見えない力で、ただのお米と水が香りよく味わいあるお酒に変わっていくのですから。
それが時代を経るうち、より糖化力の強い麹カビの酵素を使うように発展していきます。どちらにしても、本来食用にする米から造る日本酒は大変貴重なものでした。 人々は神様からのお裾分けとして、ハレの日にお酒を楽しむようになり、神前には必ずお神酒を供えるようになりました。
古代の庶民が口にできる日本酒は、今も残る練り酒やどぶろくのようなねっとりと固形分の残った濁酒だったようです。しかし神前には、濾過して透明にした浄酒(すみさけ)を供えました。神様に捧げる清い酒、そこから清酒と呼ばれるようになりました。
神様がいただくものだった清酒を、今では誰もが飲めるようになったというわけです。